いまだに時々、車両通行帯と車線境界線の見分けがつかない場合の走り方についてメールで質問が来るのですが、ぶっちゃけていいですか?
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見分けがつかないというのであれば
車両通行帯は規制標示(109)、車線境界線は区画線(102)。
規制標示は公安委員会が指定しないと効力が無いので、同じように見える線でもどっちかは車両通行帯で、どっちかは車線境界線です。
種類 | 番号 | 設置場所・意味 |
車線境界線 | 102 | 四車線以上の車道の区間内の車線の境界線を示す必要がある区間の車線の境界 |
車両通行帯 | 109 | 交通法第二条第一項第七号に規定する車両通行帯であること。車両通行帯を設ける道路の区間 |
車線境界線は単なる区画線。
車両通行帯は規制標示。
で、自転車の場合。
車両通行帯があるかどうかで根拠条文が変わる。
根拠条文 | 走れる位置 | 条文 | |
車線境界線 | 18条1項 | 左側端 | 第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。 |
車両通行帯 | 20条1項 | 第1通行帯 | 第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。 |
で、私が調べた範囲では、一般道において上乗せ規制(専用通行帯や進行方向別通行区分など)が掛かっていない車両通行帯はほぼ存在しない(ゼロに近いレベルと考えてよい)。
なのできちんと調べている人にとっては、見分けがつかないということは無いです。
見分けがつかないというのであれば、第1車線の左側端を走っていればそれで済みますよね。
これで車両通行帯であるときの第1通行帯義務と、車線境界線であるときの左側端通行義務の両方ともに満たせます。
で、路肩が広い道路の場合に、この位置だと左側端ではない、という意見があると思います。
道交法では路肩という概念がありませんので、車道は歩道の縁石までが道交法上の車道。
通行に適さないエプロン部を除いてもまだ左側端にスペースがあるのですが、
これについてですが、分からないという前提に立っている以上、両方を満たすしかないわけで、白線のギリギリ内側あたりを走っている分には左側端と捉えて問題ない。
そもそも18条1項に罰則がない理由は、どこまでが左側端なのかすらわからないので、罰則を以って取り締まるのが適当ではないからということになっています。
わからない以上は両方を満たす位置を通ればそれで済むとし思いませんが、仮に車両通行帯だったとしても、違反が成立することはほぼないです。
車両通行帯だと仮定した場合に、外側線の外側は第1通行帯ではない、という理屈が成り立つ。
ここは特に異論がないところだと思います。
そんでもって、最近は外側線の外側に自転車ナビマークが描かれていることはありますが、ナビマークなどがあるということはそこを通っても問題ない上に、警視庁のHPにおいても【自転車が通行すべき位置を明示したもの】と書いてあります。
なので万が一車両通行帯だったとしても違反が成立しません(違法性阻却事由)。
これは単純な論理で、行政側が外側線の外側を走ってもいいと誘導しているにもかかわらず、違反だとして取り締まるということは法律上で許されないからです。
違反になるように仕向けて、違反だとして取り締まるなんてことは無理。
これは仮にですが、道路管理者でもなく公安委員会でもない人が道路標識や道路標示を勝手に設置したとして、それを信じて走ったとしても違反が成立しないからです。
道路交通法は特別刑法なので刑法38条の規定により故意犯のみが処罰対象です。
車の場合は反則金制度があるのでちょっと話が変わりますが、自転車には反則金制度が無いため、故意犯であることが処罰の対象になる。
そうなった場合に、ナビマークを信じて外側線の外側を走ったとした場合、違法性阻却事由として処罰対象にはなりません。
あと、勘違いしている人って多いような気がするのですが、車の場合って車両通行帯だろうと車線境界線だろうと、走り方は変わりません。
<車両通行帯の場合>
第1通行帯通行義務(20条1項)があるのでこうなる。
<車線境界線の場合>
左寄り通行義務(18条1項)があるのでこうなる。
なので車両通行帯だろうと、車線境界線だろうと、車の場合は第2車線をずっと通行するのは違反です。
けど、一般道でずっと第2車線を走っていても摘発されることはありません。
理由は簡単で、18条1項に罰則がないからです。
無関係の方々の議論に参入するのもあれなんですが、ちょっと気になったので。
実際には私の主張は消去法によって得られたものです。
車両通行帯があるかわからない場合の通行方法としては
1 常に第十八条に従って通行する
2 常に第二十条に従って通行する
3 第十八条と第二十条の両方に従って通行する
4 第十八条と第二十条のどちらにも従わない
の4つが考えられます。— つばくろ (@tsubakuro582) August 7, 2021
車の場合、車両通行帯があろうとなかろうと、走り方自体は何ら変わりません。
そこに罰則が伴うかどうかだけの違い。
2車線で車線境界線だろうと、18条1項に基づいて左側寄り通行義務があるので、車両通行帯があってもなくても大差ない。
なのでそもそも、1~4に分類して消去法という考え方が合理的ではないし、ドライバーが20条1項に基づいて通行しているつもりでも、同時に18条1項も満たす。
車の場合、車両通行帯だろうと車線境界線だろうと、走り方は同じ。
なので教習所では、複数車線=車両通行帯と教えます。
だけど法律を厳密に見ていくと、車両通行帯であれば20条1項に従っていて、車線境界線であれば18条1項に従っている。
同じ走り方をしていても根拠になる条文が変わることと、罰則の有無が違うだけのこと(18条1項には罰則がない)。
なので車の場合は、車両通行帯だろうと車線境界線だろうと、事実上は同じなんですね。
で、自転車の場合。
車両通行帯ではなく車線境界線だった場合、この位置は左側端ではないので違反になる。
けど18条1項には罰則がありません。
車両通行帯だった場合には、この位置は第1通行帯の中なので違反ではありません。
このように、見分けがつかない以上は両方を満たすように走らないと、どっちかの違反が関わる恐れがある。
なので見分けがつかないというなら、両方を満たす第1車線の左端を走れば済むだけだと思うのですが・・・(これについては後述しますが関連する判例もあります)
路肩が広い場合は左側端通行できていないという問題はあるでしょうけど、どっちか分からない以上は18条1項と20条1項を両方満たせる位置を通行しなければならない。
これ、ホント不思議に思うのは、見分けがつかない⇒車両通行帯だと決めつける点。
見分けがつかないから両方を満たすような位置を走ろうと思うなら筋が通っていると思いますが、見分けがつかない⇒車両通行帯だと決めつけて、こんな位置を走り出すバカがいるわけでしょ。
ついでに言いますが、道路標識が見えにくい位置にあったことで違反が成立しないとした判例は確かにあります。
けど車両通行帯と車線境界線の場合、見えにくいというよりも最初から似た標示なことが問題なわけで、見えにくい位置にあったから違反が成立しないとした判例と同一視してもいいのかは疑問があります。
実際、きちんと主張している判例では、車両通行帯と車線境界線をきちんと分けているわけですし。
私が調べた範囲では、当事者のどちらかが車両通行帯だからと主張した事例でも、もう一方が車両通行帯ではないと反論した事例については、その通りに判決が出ているようです。
裁判は当事者主義、弁論主義なので双方ともに車両通行帯だと主張すると、裁判官はそれを覆すことは出来ません。
ちなみにですが、【左側端に寄って】と【できる限り左側端に寄って】が条文で違うから、と言い出す人もいるのですが、確かに条文上では分けてあります。
ただしこれが必ずしも別の位置であると解釈するのも不可解で、両者がケースバイケースでは同一の位置になりうる。
こういうのも、法の規定が出来た背景から考えれば、わかることと思うんです。
位置 | 立法趣旨 |
左側端に寄って | 遅い車両は左側端に寄り、追越ししやすくするという趣旨(18条1項) |
できる限り左側端に寄って | 主に二輪車の左すり抜けを防止し、左折巻き込みを防ぐ趣旨(34条など) |
【左側端に寄って】、と、【できる限り左側端に寄って】が必ず違う必要性もない。
違う場合もあれば、同じになるケースがあってはダメという根拠もない。
そもそも、【できる限り左側端】というのは左折時の規定で出てきますが、軽車両を想定して作った条文とは思えず、車が自転車を巻き込んで左折しないように作られている規定。
立法趣旨から検討すれば、自転車における【できる限り左側端】と【左側端】が必ず違わないといけないだけの根拠もありません。
判例の検討
これは散々やっているので今更なんですが。
面倒なのでこちらにまとめておきます。
民事の判例をみていると、車両通行帯なのか車線境界線なのかを争点にしている判例はそれほど多くはありません。
民事の鉄則ですが、双方が主張していないことを判決の基礎には出来ないので、車両通行帯だからどうのこうのという主張に対して、そこは車両通行帯ではないと反論しない限りは争点になりませんので。
適切な主張や反論をしている判例を見ると、きちんと公安委員会の決定がある車両通行帯なのかどうかを分けています。
つまり、事故ったときや事故に巻き込まれたときには、見分けがつかないという言い訳は通用しない。
確かに、道路標識や道路標示は誰にでも判別できるようにしなければならないのですが、一般道ではほぼ間違いなく上乗せ規制が掛かっているので、判別可能です。
判別がつかないという言い訳を駆使したいのであれば、両方を満たす第1車線の左側端を走ればいい。
見分けがつかないなら、双方を満たすしかありませんから。
見分けがつかない⇒車両通行帯とみなして第1通行帯の真ん中や右寄りを走るというのは、理屈として成り立っているとは思いませんが。
18条1項の判例を見ていると、様々です。
・左側端を2m空けて通行していた車に、18条1項の過失を認めなかった判例(片側1車線道路)
・左側端を1.5m空けていたオートバイに、18条1項の過失があるとした判例(片側1車線道路)
・左側端から2mの位置を通行していた自転車に、18条1項の過失があるとした判例(センターラインが無い道路)
・第2車線を通行していた原付に、18条1項の過失があるとした判例(片側2車線)
18条1項には罰則が無いので、刑事事件の判例はありません。
見分けがつかないというのであれば、両方満たせるような位置を通行すれば済むと思うのですが。
単純な話だと思うけど。
前にも書いたように、この人。
普通に18条1項の違反ですが、罰則がない以上は刑事罰に問われることはありません。
事故が起きた場合は、相手方が正しい主張をしてきた場合には過失が大きくなるというだけのこと。
見分けがつかない上に、ここが車両通行帯だと信じるに値する何かがあった場合には違法性阻却事由になるとは思います(例:誰かが勝手に専用通行帯の標識を立てたなど)。
法律上、そもそも車線境界線と車両通行帯はほぼ同じ道路標示になっているにもかかわらず、車線境界線を車両通行帯とみなしてもいいとする法律が無いので、実態としては見分けがつかないというのは言い訳に過ぎないということです。
路側帯とセンターラインについては、公安委員会が決定しなくても規制効力を持つこととされていますが(交通法2条2項、標識令7条など)、車線境界線はそうはなっていないんですね。
昭和46年の法改正時の国会議事録をみると、車線境界線を車両通行帯とみなす条文を作ろうとしていたようですが、どうも断念した模様ですし。
法律の落とし穴っていろいろありますが、見分けがつかない⇒両方を満たす位置を走ろうと努力するのは当然では?
難しく考えるから意味がわからなくなるだけのこと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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