こういうことを書くとまーた荒れそうな気もしますが。
道路交通法関係ってどうも争いが多い。
ちょっとだけ思うことを。
法律の存在意義
ここでいう法律というのは、法律以外にも政令、省令、命令、条例など法規全般を指すと思ってください。
道路交通法は法律、道路交通法施行令は政令ですが、法律を守って政令は守らないというのはちょっと無理があるので。
法律って何のためにあるのかというと、その法の支配する地域において、一定の制約を掛けることで秩序を維持するようなものだと思えばよい。
左側通行義務は法17条4項にありますが、中央から左側を走るんですよとルールで制約を掛けることによって、道路交通ほの秩序を維持する。
みんな好き勝手に走られたら困っちゃいますから。
何か道路上でトラブルが起こったときには、

こういう声は当然出てくる。
その上でですが、明文上は「法律を守る義務」を定めたものはありません。
法治国家だから守るのが当たり前だろ!という意見についても、そこまで単純な話なのか?というところでは疑問があります。
法律を守らない自由?
自転車乗りに関わるとしたら、やっぱこれかなと。
自転車横断帯です。
これについては63条の7第1項で義務として定めてあります。
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。
「しなければならない」なので義務ですね。
交差点付近にあることも明白。
なのでこのように通行すると違反です。
正解はこうなる。
けどこれ、車道を通行するロードバイクで守っている人って本当にいますか?
ジャパンにそんな奇特な方がいらっしゃるのかについては相当疑問。
この規定、直接的な罰則がなく、警察官から指示されて従わない場合のみ罰則があります(63条の8)。
私は自転車横断帯については、守る気もありませんし守りません。
けど法律上では義務であることには変わりないので、義務違反、法律違反であることは疑う余地もありません。
私の中では、自転車横断帯を守るほうが危険だという判断の下、守らないことにしています。
となると、法律を守らない自由、もしくは権利というものが存在するのか?
もしくは、裁量の問題で守らないという選択肢があるのか?という問題に直面する。
事実上罰則がないから守らない、という考えも成立します。
けどそれでいいのだろうか?という疑問は出てくる。
罰則の有無
道路交通法18条1項は、車両通行帯が無い道路において、自転車は車道の左端を通行する義務を課しています。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
例えばですが、Aが車、BとCが自転車だとして、この状況で違反を犯しているのはどれでしょうか?
.
この場合、厳密に見れば全部違反です。
一般道では、複数車線あってもほとんどの場合は車両通行帯ではないので、18条1項に基づいて自転車は左側端、車は軽車両の通行分を空けた上で左側寄り通行義務があります。
いまだに複数車線あると車両通行帯だと思っている人は多いかと思いますが、車両通行帯は公安委員会が決定した複数車線道路のみを指すので(法2条1項7号、2条1項16号、標識令9条別表第5、法4条等)、公安委員会が意思決定していない複数車線道路は車両通行帯が無い道路として扱われます。

車線境界線や車道外側線は、区画線に過ぎないので道路交通法上は何ら規制効力を持ちません。
なので理屈の上では、車は車線に従って走る義務も無いと言えますが、そもそも18条1項には罰則がない。
なのでB自転車のように、センターラインギリギリを走る自転車がいたとしても罰則はありませんし、第1車線と第2車線に跨って走る車がいても罰則は無い。
けど、法律上は義務規定なのと、秩序を考えたらこうなりますよね。
罰則の有無で好き勝手されたら、秩序維持も何もない。
なので常識的に自転車は左側端に寄るし、車は軽車両の通行分を空けた上で左側に寄り、かつ車線の中を走ろうとするのが一般的。
なお、道交法の車道は歩道の縁石までであって、車道外側線は何ら効力がありません。
罰則が無いとは言え、一般常識とか倫理観とかモラル的なところから、ルールを守ろうとするのが一般的。
けど、以前問題になっていたこの方のように、好き勝手する人が現れた場合には、取り締まる法律が無い。
(この道路は片側2車線ですが車両通行帯ではない。管轄署にも確認済み)
守口付近の方このような煽られ運転自転車には注意しましょう。
本人曰く警察に届けても自転車も悪いということで自動車側がクラクションを鳴らしてもお咎めなしです。
安全にぶつからないように注意して追い越しましょう。 pic.twitter.com/7K0jYGlJEQ
— ❄Haru⛄️ (@Haru_gse20) December 11, 2020


罰則があるかないか?という観点で守る・守らないという選択肢を行使されると、それが秩序を乱すことにつながる。
まあ、この方についてはいまだに違反であることを認めていないようですが、普通に違反。
違反であることが明らかでも自ら認めないとなると、もはやルールとはなんなのだろう?と思ってしまう。
上で取り上げた自転車横断帯についても、事実上罰則がない(警察官から注意されて守らない場合のみ罰則)。
18条1項のキープレフトも罰則はありませんが、BやCの位置を通行する自転車が社会的に許されるのか?というと、それも違うかと。
そのほか、自転車は飲酒運転が禁止されていますが(法65条1項)、酒気帯び運転だと罰則がなく(117条2の2第3項)、酒酔い運転の時しか罰則がない(117条の2第1項)。
罰則が無いとは言え、自転車の飲酒運転が許されるのか?というとそれも違うかと。
仮にですが、自転車横断帯は通行義務があるけど守らない、18条1項(キープレフト)や飲酒運転は罰則が無いとは言え許されるべきではない、とした場合、結局のところどこで線を引いているのかがわからなくなる。
「常識的に」とか「倫理的に」などという曖昧な基準を元に判断することになってしまう。
自治体によっては自転車保険加入義務の条例がありますが、あれも罰則はありません。
愛媛県では、独自の条例により自転車を追い越すとき、追い抜くときは1.5m空けるようにと決めていますが、あれも罰則は無い。
条例全般が罰則がないわけではなく、迷惑防止条例のように罰則があるものもあるので、条例だから守らなくていい、罰則がないから守らなくていい、という単純な判断をすることも出来ない。
けどルールとしては明文化されている。
18条1項の左側端通行にしても、どこまでが左側端という規定が無いので、好き勝手に解釈される原因にもなる。
事実、この騒動の時も、



このような独自解釈をメールで送ってきた方もいましたが、そのようなルールはないし、判例も意味を取り違えているだけのこと。
けど、どこまでが左側端と明文化されていない以上、「俺にとっては左側端と考えている」などといくらでも言い訳が成り立つし、議論したところで罰則もない。
こういうのも、「常識的に」とか「倫理的に考えて」などという、曖昧なところを求めるしかない。
ルールを守るために曖昧な要素を用いるしかないという点では、ルールを守れと声高に言うことにどの程度意味があるのだろうか?と考えてしまいます。
事実上取り締まりされていない規定
これはタイムリーな話題になりますが、先日、激坂アタックしているユーチューブの動画で、豪快に道路の右端を通行するとか、蛇行している方々がいました。
前者は逆走(法17条4項)、後者は進路変更禁止違反(26条の2第1項)。

26条の2第1項も罰則が無いですが、逆走については明確に罰則があります。
とはいえ、警察官が現認しない限りは取り締まりされているようにも思えませんし、通報したところで何も起こらないでしょうw
残念ながら。
斜度20%近いところだし、他の車両が通行していないのだから逆走してもいいんじゃね?という言い訳が成り立つのであれば、その辺を逆走しているママチャリと何が違うのだろう?と思ってしまう。
警察に通報すればいいだろ!と迫ってきた方もいましたが、通報したところで何も起こらないことは経験上良く知ってますので、そんな無駄なプレイをするつもりもなく、どちらかというと全サイクリストに向けての注意喚起とさせていただきました。

本来、法の運用について、

このような恣意的解釈がまかり通るのであれば、なんでもコレになっちゃうと思うんですね。
自転車への追越し時の側方距離がちょっと近かったけど、事故が起こってないしこれくらいはいいでしょ?とか。
事実上取り締まりされていないんだから、これくらいはいいでしょ?とか。
事実上取り締まりされていないという甘えが、今の杜撰な道路交通法の運用に繋がっていると思うのですが、根底にあるのはバレなきゃいいし、取り締まりされなかったらセーフみたいな感覚、ですよね。
「ルールを守れ」と言ったところで、本人が聞く耳持ってないし、警察に行っても取り合ってくれないような状況で、何が変わるんだろうと思ってしまう。
なので全サイクリストに向けた注意喚起という形のほうがまだ意味があるかな、というのが私の感覚なので、このように記事にしたまでです。
あと、法律違反であることを承知で、わざと守らない人というのもいます。
パッと頭に浮かぶのはコレ。

自転車は逆走こそが最も安全だという考えに基づいて、絶対に守らないそうです。
こういうのは刑罰を以って対処するしかないと思いますが、事実上刑罰が機能していない(取り締まりしていない、取り締まりしたとしても99%は不起訴)という実態を鑑みると、こういう人に対して「法律を守れ」と言ったところで何が起こるのだろう?という気がする。
結局のところ
香川県にはゲーム条例と言って、ゲームをする時間を制約する条例があることはよく知られているかと思うのですが、罰則が無いとは言えアレも広い意味で言うなら法規の一種。
個人的には憲法違反ではないかと思いますが、悪法も法の一部なことには変わりない。
罰則が無いから守らないし実効性が無いという見方も出来るし、ゲーム条例とかも守らない人は守らないでしょう。
自転車保険加入義務条例についても、守らない人は守らない。
道交法の義務でも、私なんて自転車横断帯を守りませんよと宣言してますが、法律上の義務であることには変わりない。
何を言いたいかという話なんですが、法律はマナーを上書きするルールであることは間違いない。
けどルールを守るかどうかについては、人それぞれの道徳心とか、自分の利益と比較して守るか守らないかを決めているというのが実情。
なので「法律を守れ!」と主張することだけで、全てがうまく回るのか?と聞かれると、果てしなく疑問を持ってます。
結局守るか守らないかについては、人それぞれの道徳心、倫理観に委ねられている面が大きく、可罰的違法性があれば処罰されるとはいえ、処罰されようとも守らないという人も普通にいる。
それこそ、ヤクザさんのお勤めなんてそうですわな。
ちなみに私の場合、道路交通法関係で守らないことは・・・自転車横断帯くらいですかね。
一応、私の中で守らない基準は設けています。
①自分の利益
②他人の利益
③第三者の意見
こんなプレイをすることで、後続車からすれば自転車が左折すると思い込んで事故が起こるリスクがある(自分の利益)。
事故の加害者が生まれかねない(他人の利益)。
警察のHPでは横断帯の通行義務があると書いてあるけど、現場レベルの警察官とか、警察署の交通課に聞くと、車道を通行しているならそのままどうぞと言われる(第三者の意見)。
現場レベルの警察官に聞くと、通行義務はあるけど危険だしそのまま直進してもらって構わないというので、堂々とそうしてます。
誰にとってもメリットがありませんし。
だけど法律違反であることには変わりないので、法律を守ると豪語する人や、常に自転車横断帯を守っている人からすれば許しがたい悪人なんでしょうね。
法律を守るという行為は、道徳心とか倫理観を元に動くわけで、「ルールだから」とか「法治国家だから」などと言う理由では人は動かないと思う。
ルールを守れと主張することって一番簡単なことだけど、響かない人も一定数いる。
法律を守らない人が増える=治安の悪化だと思いますが、自転車に甘い見方をする人が多い以上は、自転車のルール順守なんて遠い世界なのかなと思うけど、言い続けるしかないのも現実。
どうでもいいルールとそうでないルールをどうやって分けるのかとか、明確な線引きも無いですしね。
18条1項のように罰則がないルールをどうやって秩序を維持するかというと、そこについては道徳心とか倫理観しかないですし。
法律を守れと主張することって一番簡単だよなと思う。
けど人は、全ての道路交通に関わるルールを守っているわけではなく、良くも悪くも自分の中にある道徳心とか倫理によって、法を取捨選択している。
ルールだから守れ、と言っても、時々むなしく感じるのは私だけ?
これはルールではなくマナーになると思うけど、
結局のところ、道徳とか倫理とか、そういうところが無いとルールって機能しないような。
罰則を避けるためにルールを守るわけでもないし、罰則がないから守らなくてもいいわけではない。
けど無意味で有害だと思うルールも存在している。
「ルールを守れ」という言葉の意味って何なんだろう。
ルールを守らない「権利」とか「自由」というのはおかしい気もするけど、事実上は守らない選択肢が存在している。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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