「自転車専用」信号について質問を頂いたのですが、ちょっと面倒なので細かい話は伏せます。
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「自転車専用」信号の効力
いきなりですが質問です。
車道の信号には「自転車専用」の補助標識がついています。
青自転車(車道通行)が信号無視にならないのはわかると思いますが、オレンジ自転車(歩道通行)は信号無視になるでしょうか?
答えはどちらでしょうか?
では正解を発表。
理由は簡単。
第二条
5 特定の交通についてのみ意味が表示される信号が他の信号と同時に表示されている場合における当該他の信号の意味は、当該特定の交通について表示されないものとする。
要は「自転車専用信号」と同時に表示される歩行者用信号が「自転車」についての効力を失う。
その交差点付近の「従うべき信号機」が全て「自転車専用」のほうになるからですね。
なお、今回頂いた質問については、どこかのYouTuberがこの交差点について、「歩道を通行して横断歩道を通行する自転車は歩行者用信号に従うと警察に確認した」みたいに解説しているらしいのですが、
たぶん聞き方が悪いか、対応した警察官が勘違いしたかのどちらかでしょう。
念のため管轄署に確認しましたが、「自転車専用」の補助標識がある以上、歩道通行自転車も「自転車専用」がついているほうに従うことで間違いないとのこと。
まあ、聞くまでもなく法律上明らかなんですが笑。
これ、現実的には車道の信号が赤、歩行者用信号が青ということがないと思うので問題になることは滅多にないはず。
要は歩道を通行していた自転車が「歩行者用信号の赤、自転車専用信号の青」に従って停止したところで、本当は渡れるのに自主規制しただけ。
この話を書くと必ずといっていいほど「信号機の対面の範囲ガー!」となるのですが、対面とはその方向にある信号全てです。
そもそもですが平成20年施行令改正以前は、横断歩道を横断する自転車が従うべき信号は車道の信号になってました(対面)。
「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について|e-Govパブリック・コメントパブリックコメントの「「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について」に関する意見募集の実施についての詳細です。
イ 横断歩道を進行する普通自転車が従うべき信号灯火を定めることについて
この項目に対しては、
○ 自転車に乗ったまま横断歩道を通行することはできないはずであり、また、自転車で横断歩道を通行することは大変危険。
といった御意見がありました。今回の改正は、道路交通法の一部を改正する法律(平成19年法律第90号。以下「改正法」といいます。)により、例外的に歩道を通行することができる普通自転車の範囲を明確化したことに伴い、自転車横断帯が設置されていない交差点において、これらの普通自転車が横断歩道を進行して道路を横断することが見込まれることを踏まえ、横断歩道を通行する普通自転車が従うべき信号を車両用でなく歩行者用灯器とするものです。
道路交通法においては、普通自転車が横断歩道を通行することを禁止する規定はありませんが、横断歩道は歩行者の横断のための場所であることから、交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)において、横断歩道の通行について、歩行者の通行を妨げてはならない旨を周知し、歩行者の安全確保を図ることとしています。
自転車が横断歩道を乗ったまま横断することは禁止されてないことと、今までは車両用信号だったのを歩行者用信号に変えただけだと説明している。
平成20年改正以前は、歩道から横断歩道に進行する自転車が従うべき信号機が「車両用」だったのは警察庁が認めている話ですが、そもそもこれを知らない人も多い。
当然、施行令改正以前の判例も同様の解釈。
平成2年東京地裁の判例から。
なお、被告らは、「被害者が本件横断歩道上を横断する以上、たとえ自転車に乗つて横断するとしても歩行者用信号機の表示に従つて横断すべきであり、被害者が横断を開始しようとしたときには、本件横断歩道に設置されていた歩行者信号機は赤色ないし青色点滅の表示であつたから、被害者は横断を開始してはならず、それにもかかわらず、横断を始めた被害者には重大な義務違反がある」旨主張する。
しかし、自転車は、道路交通法上「軽車両」として、交差点の通行方法については、自転車横断帯が設けられていない交差点にあつては、交差点の側端に沿つて通行すべきものであり(道路交通法18条、34条、63条の7参照)、その際従うべき信号は、歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」と表示されている場合にはこれにより、そうでない場合には車両用信号によるものとされている(同法7条、道路交通法施行令2条1、4項)のであるから被告らの右主張は採用することができない。
東京地裁 平成2年12月18日
よくある「対面ガー!」というのも、対面とはその方向全てを意味していたのは明らかかと。
もちろん今は、歩道から横断歩道に進行する自転車が従うべき信号機は歩行者用ですが、その交差点に「自転車専用」の信号機がある場合には、全ての自転車は「自転車専用」に従うことになります。
分かりにくいよね、この話って。
そして仮に歩道から横断歩道に進行する自転車が「歩行者用信号」に従ったとしても、問題は起きないことが多い。
なぜなら、歩行者用信号と車道の信号は基本的に同期する上、先に歩行者用信号が赤になるので、本来は渡れるタイミングなのに自重するだけになるから。
青信号では必ず渡らなければならないわけではなく、青信号で渡らないことも自由。
警察でも間違う
質問頂いた内容の詳細は書きませんが、「警察に聞きました」が何の意味もないことは言うまでもなく。
都道府県警本部ですら間違いは多発しますし。
質問の仕方次第でおかしな回答になることはあるし、対応した警察官の知識の問題から間違った内容を教えられるリスクもあるし。
こんなのいくらでもあります。
ちょっと気になる話なんですが、どこかの方が複数の警察署にいき、第1通行帯が左折専用レーンの場合、直進する自転車は第2通行帯を通行してもよいと教わったとか。
法律上はあり得ない話ですが、普通に考えれば「やむを得ない場合まで取り締まりしてないし」という意味なんだろうなと理解できます。
そしてそれは警察の取り締まりの話でしかなくて、事故が起きたときには通行帯違反による過失が加重されることになる。
だから「警察に聞きました」系は鵜呑みにしちゃダメなのよ。
自己責任でやむを得ず第2通行帯を通行することは知ったこっちゃないけど、あくまでも違法だと認識しての話なのかで意味が違うのだから、よーそんなもんを拡散する気になるなと…
まあ、二段階右折は任意だと回答する警察署とか、歩道の逆走違反だとして切符を切る警察官、自転車が路側帯を通行可能かを答えられない警察官、電動キックボードは玩具になったと答える警察本部。
警察に聞きました系って、近所のおっちゃんに聞いた程度の意味しかないんじゃないかとすら最近疑ってますが、まともな取り締まりすら期待できないよね。
たまに間違った説明をする警察に「その解釈だとこの条文に反してませんか?」と質問しても、開き直ってゴリ押しされたりするのでなおさら聞く意味がないことすらありますが…
なお、この件。
何人か気になっていらっしゃる方がいるようですが、たぶん再来週末あたりにはわかりそうです。
ちょっとお時間を頂きますが、少なくとも手持ちの資料では16条1項と17条4項から「歩道等がある場合には車道」と解釈するものと思われます。
ついでにですが、
信号についた補助標識の「自転車専用」って、特定小型原付を含むのかよくわからず。
あくまでも令2条3項の範囲なので、なおさらわからない。
管轄署の見解では「自転車専用」に従ってかまわないとの話でしたが、根拠が見当たらないので保留扱いにしておきます(標識令の補助標識を流用できる根拠がイマイチ不明)。
「警察がこう言っていた!」と言っても、いざ事故が起きた場合に損害賠償請求で揉めて訴訟になった場合には違う判断になりかねないので、これの根拠がわかる方がいましたら教えてください。
まあ、他人の解釈を鵜呑みにすることなく、他人の解釈が条文に反してないかは自分で確認した方がいいよね。
まあ、従うべき信号については間違えたとしても、通常はそれ「だけ」では切符にはなりません。
ついでに歩行者妨害したとかが加われば別ですが、ちょっと前に警察庁有識者会議が発表した方針でも、「悪質な違反」や「警告しても従わない場合」に青切符だとしている。
私なりに思うのは、自転車の違反って何ら悪意がなくても成立しちゃうことが多々あるので、そこを調整する意味合いなんだと思う。
代表的には「歩行者自転車専用」の補助標識がある交差点ですが、車道の青信号には従う意思を示しているのだから、悪意は全くない。
厳格に取り締まりしたら自転車の違反なんてだいぶ理不尽になりますが、取り締まりで調整するのではなく、法改正で整理すべきだと思うの。
極論すれば、全ての自転車は何らかの違反を必ずしてます。
ダブル合図を継続しながら左折できるわけがない。
ダブル合図を継続しながら減速するには固定ギアの逆踏みくらいしかないでしょ笑
手信号出せよ!なんてとても言う気にはなれません。
なお、うちで書いた内容が必ず正しい…みたいな読み方しちゃダメですよ。
客観性は保ちたいので、解説書、判例などにはこだわりますが。
解説書や判例も必ず正しいわけではないのですが…どこかの大阪高裁は信号無視事件について「悪いのはドラレコがあるのにウソをついた不誠実な警察官ですヨ!裁判は打ち切り!」と発狂してましたが、最高裁が破棄。
判例の全てが正しい…なんて読み方をしたらとんでもないことになるし、それぞれ意味を考えないとダメなんですよ。
まあ、「判例」を異常に有り難がる人が多くてビックリしますが…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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