いまだにこういう事案は絶えないわけですが、
ことし1月、「モペット」などと呼ばれるペダル付きの二輪車に乗って新潟市中央区の市道を無免許で走行したとして、警察は新潟市中央区に住む20代の会社員2人を無免許運転の疑いで書類送検しました。
警察によりますと、書類送検されたのは新潟市中央区に住む20代の会社員2人で、ことし1月28日、「モペット」などと呼ばれるペダル付きの二輪車に乗って新潟市中央区の市道を無免許で走行した疑いが持たれています。
「モペット」は電動モーターやエンジンで走行できる二輪車で、法律上、原付きバイクやオートバイに該当し、公道で運転する場合、原付きバイクなどと同様に免許が必要となります。
調べに対し2人は容疑を認めていますが、免許などが必要だと認識していなかったということです。
県警察本部交通指導課の近藤芳靖特命取締補佐は「『モペット』を運転する場合、アクセルをひねらずにペダルをこいで運転していたとしても、免許を持っていないと無免許運転になってしまうので気をつけてほしい」と話していました。 「モペット」で市道を無免許走行の疑い 2人書類送検 新潟市|NHK 新潟県のニュース【NHK】ことし1月、「モペット」などと呼ばれるペダル付きの二輪車に乗って新潟市中央区の市道を無免許で走行したとして、警察は新潟市中央区に住む20代…
さて。
ちょっと前にも取り上げましたが、「免許が必要な乗り物と認識していなかった」という状態。
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。
これも故意犯の処罰規定しかなく過失犯の処罰規定はない。
つまり当該車両が「一般原付」(もしくは免許が必要な乗り物)だと未必的にせよ認識していなかった場合には、故意がないことになる。
ただし、刑法38条3項でいう「法の不知」とも取れなくはないので、このあたりは捜査次第なんですよね。
第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
(2) 本件運転
原告は,令和元年9月3日の朝,Aが所有する準中型自動車(最大積載量1100㎏,車両総重量3505㎏の貨物自動車で,日産製・アトラス。以下「本件車両」という。)を運転してB支所を出発し,配送業務に従事中,午前10時50分頃,大阪府B市(住所省略)先路上において,西方向から東進して丁字路交差点で北方向に左折進行するに当たり,本件車両を民家のブロック塀に衝突させる物損事故を起こし,自ら110番通報をしたことで,準中型免許を受けずに準中型自動車を運転していたことが発覚した(以下,同日の事故を起こすまでの運転を「本件運転」という。)(甲3,乙1~6)。(3) 本件不起訴処分
原告は,本件運転について,道路交通法違反(無免許運転)被疑事件の被疑者として取調べを受けるなどしたが,令和元年11月29日,同被疑事件につき,「嫌疑不十分」を理由として公訴を提起しない処分(以下「本件不起訴処分」という。)を受けた(甲5)。大阪地裁 令和3年3月25日
無免許運転(準中型免許を受けずに準中型自動車を運転)について、検察官は「起訴猶予」ではなく「嫌疑不十分」としている。
要は当該車両を運転するために別の免許が必要とは認識していなかった(自分が持つ免許で運転可能と信じていた)ことから無免許運転の故意がなく「嫌疑不十分」にしたのかと。
ただしこの判例は「無免許運転の行政処分に故意は要件とされてない」とし、行政処分は適法としている。
(1) 道路交通法64条1項に該当するために無免許運転の故意が必要であるか否か
免許の取消処分は,道路交通上危険のある運転者を道路交通の場から排除して,道路における危険を防止し,交通の安全と円滑を図ること(道路交通法1条参照)を目的として行われるものである。そして,道路交通法施行令の採用するいわゆる点数制度は,このような免許の取消し等の処分が相当であると認められる程度に道路交通上の危険性が高いと評価できる運転者を類型的に規定し,その危険性の度合いに応じて自動車等を運転することができる地位をはく奪等することにより,道路における危険を防止し,交通の安全と円滑を図るために定められたものであると解される。このように免許の取消等の処分を設けた行政目的からすると,客観的な違反行為が認められれば,故意の有無にかかわらず,免許の取消し等の処分をすることができるものと解される。
そして,道路交通法103条1項5号は,自動車等の運転に関し,同法又は同法に基づく命令に違反したことを免許の取消しの要件とし,同法64条1項は,何人も,同法84条1項の規定による公安委員会の免許を受けないで,自動車等を運転してはならない旨規定するところ,上記の各規定は,その文言上,故意があることを要件とはしてはいない。また,道路交通法,道路交通法施行令等の関係法令をみても,道路交通法64条1項に該当することを理由に免許の取消し等の処分を行うための要件として,運転者の故意があることを明文で規定しているものは見当たらない。
以上によれば,道路交通法64条1項に該当するために無免許運転の故意は必要でないと解される。
要は64条1項の処罰規定(117条の2の2)を適用するには故意が必要だけど、施行令で点数を付ける基準は「117条の2の2の罪を犯した場合」ではなく「64条1項に違反する行為」としている以上、刑罰は嫌疑不十分でも行政処分は可能となる。
なかなか興味深いことに、救護義務違反として点数を付ける場合には故意が必要。
理由はシンプルで「72条1項前段に違反する行為」ではなく、「117条1/2項の罪に当たる行為」としているので、117条1/2項は故意犯の処罰規定だから。
ちなみにモペット無免許は報道事案はたいてい不起訴になっている。
今回の事案は未必的な認識があるのかわかりませんが、仮に不起訴でも行政処分として欠格期間を設けることは可能かと。


以前車検キレで不起訴という報道が出てましたが

わりとややこしいのよね。
ちなみに一般原付と特定小型原付を見分ける手段は最高速度表示灯の有無くらいなんかな。
ペダル付き特定小型原付もあるし。

電動アシスト自転車と一般原付の区別はやや難しい。
アクセル付きなら未必的な認識があると認定できそうですが、アシスト比率オーバーはよほど異常なスピードが出ないとわからない。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
不起訴でも、行政処分OK=青切符となれば、
大阪府警など、点数稼ぎ放題なんですけどね。
もっと取り締まってほしい。
今でも、歩道走行のモペットよく見ます。
コメントありがとうございます。
無免許運転については赤切符です。
青切符と点数は無関係なので…ややこしい。