だいぶ前に書くことを予告した「警視庁(東京都)の歩道の自転車通行可標識撤去」について。
ちょうどタイムリーなネタがありまして、参議院の予算委員会にて「自転車が歩道通行したら青切符なのか?」という質疑がある(47分くらいから)。
要は「歩道通行可の標識がないのに歩道通行したら青切符なのか?」という話ですが、歩道通行要件に「車道、交通の状況からやむを得ないと認められるとき」というのがあることと、
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
青切符は悪質な違反や警察官の指示に従わない場合だとする従来の説明を踏襲した答弁になっている。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
令和5年12月26日(火)11:02~11:09
問 自転車運転の青切符を盛り込んだ報告書が国家公安委員にも報告されたと思います。そこでお伺いしたいのは今後の教育の問題です。特定小型原付でも具体的な教育があまりなされている様子がなくて、今後、警察庁だけではなくて文科省とか総務省とも連携しなければならないと思います。閣僚としてどのように働きかけるおつもりかお願いします。
答 まずご指摘の自転車につきましては、近年、対歩行者との事故が増加傾向にあるとこういうふうにまず認識をしております。そのことを踏まえまして、警察庁においては、本年の8月以降、有識者検討会を開催してきたところでございます。お尋ねのとおり、このたび、有識者検討会においては、安全教育、違反の処理、交通規制の3点に関して、今後の取組の方向性について提言をする中間報告書が取りまとめられ、提言いただいたところでございます。
このうち、交通安全教育につきましては、官民の知見により、それぞれの年齢層、ライフステージに応じた安全教育に係るガイドラインの策定をいたしまして、安全教育の質の担保をすることが提案されているところでございます。これを実現するためには、教育現場や自治体との連携が非常に重要であるため、関係省庁に対して必要な働き掛けを行っていくよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
そのようにしっかりと連携をいたしまして、やってまいりたいと思っておりますが、違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用に当たっては、指導警告をまず原則といたします。これに従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては青切符による取締りを行うことにより、目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取組をしっかりとやってまいりたいと考えております。問 取締りについては、まず切符を切るということではないということですね。
答 申し上げたとおり、まずはやはり指導警告これを原則といたしておりますので、報道等では即青切符というイメージが残っておりますが、やはり交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが私どもの目的でございますから、その点については、申し上げたとおりでございます。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
青切符制度が導入されても、基本は注意指導です。
ちなみに若干答弁内容がおかしい。
事故の場合には青切符の適用はないので。
それを踏まえて。
警視庁管内では自転車通行可の歩道から標識を撤去している。

国会答弁にもありますが、「やむを得ないがある以上多くの場合は歩道通行可能」なので、標識を撤去することは実際にはほとんど意味がないんです。
標識があっても絶対的に歩道通行できるわけではない上に、
標識がなくても「やむを得ないと認められるとき」は歩道通行できる。
つまり標識の有無は実務上さほど関係ないのよね。
これは以前から指摘している通り。

そうすると、警視庁が躍起になって標識を撤去する真意はなんなのかになりますが、以前から指摘しているように特定小型原付対策なんよ。
特定小型原付の歩道通行については、普通自転車のように「やむを得ないと認められるとき」に相当するルールがない。
なので自転車通行可の標識を撤去すると、特定小型原付は一切歩道通行できないことになる。

以前から特定小型原付対策なんだろうなと思っていたけど、尾根幹の規制変更についてついでに質問したら、やはりメインターゲットは特定小型原付。
で、メインターゲットが特定小型原付になるとしても、そもそも「時速6キロモード」に切り替えないまま歩道通行することが問題なのであって、標識を撤去したら魔法のように特定小型原付が車道を走り出すわけがないじゃないですか。
バカは相変わらず歩道を爆走するわけで。
結局、「自転車通行可」の標識を撤去しまくる警視庁の仕事をみていると、標識撤去にカネを使いまくるけど実務上のメリットはほとんどないんじゃなかろうか?
もし特定小型原付を排除したいのなら、
補助標識で「特定小型原付を除く」とつけても効果がある。
躍起になって標識を撤去しまくる方針があまりにもお役所仕事、形式主義に見えてしまいましてね。
撤去することで効果が見込まれるならまだしも、国会答弁でも「やむを得ないが発動!」としている程度にあまり関係ない。
何らかの効果が見込まれるならまだしも、躍起になって標識を撤去しまくる方針には疑問なのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
こんにちは。
https://luup.sc/news/2025-03-25-safety/
↑のリリースによるとLUUPが危険行動防止システム「LUDAS」を導入し、このシステムで逆側歩道走行を検知してペナルティを与えるそうです。
「現状の測位精度で推定可能な大通りでの逆走または逆側歩道走行が対象。」とあるので両者を識別して逆走にペナルティではなく「歩道の逆走は違反!」でペナルティだと思うので合法歩道走行でもペナルティを与える可能性があるのは厳しいですねw
あと、もしそうで無いとすると車道逆走と車道側ギリギリの逆側歩道走行(特例モードでは合法の場合あり)の違いをどのくらいの精度で検知できるのかが気になりますが、実際問題、逆走検知も反対車線の中央を逆走、とかじゃないと実質的に無理なんじゃないかと。
ただ、全ての歩道から「歩道の自転車通行可標識が撤去」されれば話は別ですが。
コメントありがとうございます。
たぶん「時速6キロモードにしない歩道逆走」にペナルティなんじゃないかと思ったのですが、違うっぽいですね笑