いろんなことを考え出す人がいるんだなとある意味感心しますが、
38条2項は、側方(そば)を通る場合ですから、もともと自転車の側方通過時には側方間隔を十分にとる必要があります。
此方を向いていない歩行者であれば1.5m以上です。自転車も同程度。
間隔を十分に開けて、更に横断者がいない事が確かならば、一時停止までの必要は無い事になります。— 青島 (@blue_eye_land) November 9, 2025
道路交通法38条2項は、横断歩道上又は横断歩道の手前に停止車両がある場合において、停止車両の側方を通過して前方に出るときには一時停止しろという規定。
わりと興味深いのは、同3項(横断歩道手前30mでの追い抜き禁止)については自転車を追い抜きするケースが除外されているものの、2項については自転車が停止している場合でも除外されていない。

そしてこの意見は側方を「そば(至近距離)」と解し、自転車を追い抜きするときには十分な側方間隔を取る必要があるのだから「そば(至近距離)」ではなく、自転車が横断歩道手前に停止していても一時停止義務はないとする。
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。
この人の珍解釈だと、第一車線を通行するオートバイがいたときに、第三車線から追い抜きすることは「横断歩道手前30mであっても」禁止ではないみたいな話になっているのでして、
2/3項を新設したときの警察庁の解説とも合致しない。
2項は「前車が自転車の場合」を除外しなかったのに、3項では除外してるのよね。
これももちろん理由がある。
詳しくは警察学論集1967年12月を読みましょう。
さて、3項の立法趣旨は「追い抜き時に横断歩行者の発見を遅らせてしまい危険があるから」ですが(警察学論集1967年12月、33頁)、「前車が軽車両の場合」が除外された理由は、軽車両は速度が遅く追い抜きによる危険が少ないから(同34頁)。
34頁にいう「危険」とは「歩行者の発見を遅らせる(いわゆる死角)」のことだと文脈から読めますが、
一方、2項では「前車が軽車両の場合」は除外されていない。
これが何を意味するかというと、2項の主目的は「死角解消」ではないという話なのよ。
「横断歩道手前に停止している車両があれば、駐停車禁止区域なんだから横断歩行者優先中以外にありえねーだろ」
「だから歩行者がいるかいないかを確認するまでもなく、後方から来た車両は一律止まれ」
しかしながら、横断歩道において事故にあう歩行者は、跡を絶たず、これらの交通事故の中には、車両が横断歩道附近で停止中または進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見が遅れて起こしたものが少なからず見受けられた。今回の改正は、このような交通事故を防止し、横断歩道における歩行者の保護を一そう徹底しようとしたものである。
まず、第38条第2項は、「車両等は、交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、当該横断歩道の直前で一時停止しなければならない」こととしている。
もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。警察学論集、「道路交通法の一部を改正する法律」、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月
要は「歩行者優先中以外ありえねーだろ」という点を重視して、本来なら「歩行者を確認→一時停止」となるところを「一時停止→歩行者を確認」にしたのが2項。
わざわざこのようにした理由は、
「横断歩道手前に停止している車両があれば、駐停車禁止区域なんだから横断歩行者優先中以外にありえねーだろ」
「だから歩行者がいるかいないかを確認するまでもなく、後方から来た車両は一律止まれ」
にありますが、冒頭の意見をみて、いろいろ考える人がいるんだなあと思った。
冒頭の理論だと辻褄が合わなくなりますが…
ところで、2項の解釈は長年「対向車を含まない」で運用されてきて、警察庁がその旨を解説した証拠までありますが、

数年前に読者様から「なぜ?」と質問を受けたときに、正直根拠はなかった。
けど気になって調べたところ、ザクザク出てくるのよね…対向車を含まないと解釈する理由が。
そしてわりと興味深いのは、いわゆる道交法界隈と呼ばれる方々の中にも「対向車を含むとする解釈はおかしい」と考える人が複数いる点。
たぶんこの界隈の方々は、減速接近義務の重要性が蔑ろにされることを懸念しているのではないかと思う。
本来、減速接近義務がきちんと履行されるなら2項は不要な規定だといえますが(警察学論集の解説からも明らか)、それでもなお2項を新設した理由は、結局「横断歩行者優先中なのは確実だから、どのみち一時停止するのだし」という思考が見えるのよね。
JAFの一時停止率調査にも疑問があるけど、

一時停止率が上昇しても、事故件数抑制につながっているようには見えない。
これをみても、基本は減速接近義務なんだなと痛感しますが、
スピードガンを入手して、減速接近調査をしたら興味深い数字が出ると思う。
誰かスピードガン持ってないかな?
警察にしても、減速接近義務違反の検挙が難しいことから減速接近義務違反で検挙することはほとんどしてないと思われますが、

違反の立証が容易なものばかり検挙したがる警察の姿勢も問題だと思う。
それこそ、「左右の見通しが悪い交差点の徐行義務違反(42条1号)」の検挙なんてまず聞かないけど、「指定場所一時不停止(43条)」は大量に検挙する。
立証しやすさは明らかに後者とは言え、偏りがあるのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
ブレーキの性能に任せて、直前まで減速しない車が多いですね。
走って渡れと言わんばかりのスピードの輩もいますし(停まるまで待ったら睨まれました)。
コメントありがとうございます。
減速することが大事なんですよね。。。