こういう意見を見ていると、ちょっと違うんじゃないかと思うの。
私のうがった見方をお話しします。背景には反則金の納付額が減少していることがあると、私は考えています。
最近、どうやら交通違反が減ったため、青切符を交付する件数も減っているらしいんです。青切符で納付される反則金の総額は、ピーク時に約500億円もあったそうです。この反則金の行き先は国庫、言ってみれば特定財源であり、信号機の整備などに使われています。
しかし今や、青切符による反則金の納付額はピーク時から半減しているんです。“業界”としては、反則金の納付額を増やしたいと考えるでしょ。
交通違反の自転車に「青切符」導入検討 「反則金の納付額が減少していることも背景に。何でもかんでも取るな!」辛坊治郎が憤慨キャスターの辛坊治郎が8月31日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。交通違反で「青切符」を交付して反則金を納付させる「交通反則通告制度」の対象に、自転車を新たに加えるこ...
自転車青切符制度の創設の理由として、反則金の「売上向上」が目的なのでしょうか?
Contents
売上向上が目的にならない理由
まず思うに、仮に自転車青切符制度を創設しても、反則金の額は原付より下になります。
しかも台数が多い普通車を狙うほうが。
違反処理に掛かる時間が同じなら、単価が高いクルマを狙うほうが合理的。
「売上向上」が目的なら、単価が低い自転車を狙うよりもクルマを狙うほうが自然です。
例えばですが、歩道を横切り道路外の施設に出入する際には一時停止義務があります。
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条及び次条第一項において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
著しく遵守率は低いと見てますが、一時停止しなかっただけで違反にできます。
歩行者の通行を妨げないとは、たとえば歩道を通行しまたは通行しようとしている歩行者をして一時立ち止まらせるとか、後戻りを余儀なくさせるようなことのないことをいう。
なお、車両の運転者は、歩道等に入る直前で一時停止し発進したとしても、その後において、歩行者の通行を妨害することになるときは、再び一時停止するか、または徐行しなければならない。
「歩道等の直前での一時停止」「歩行者の通行を妨げないこと」このいずれかの要件を欠いても法第17条第2項の違反となる。
警察庁交通企画課、道路交通法ハンドブック、p1070、ぎょうせい
「売上向上」を狙うなら、広い駐車場があるコンビニでカメラ構えて待機していれば「入れ食い状態」で売上が見込めると思いますが…
単価が低い自転車を狙うよりも、自転車よりも単価が高い上に違反が見込めて、しかも立証が簡単な一時停止義務に狙いを定めますけどね。
他にも横断歩行者等妨害のうち、38条1項前段の減速接近義務違反とか。
車両等が横断歩道に接近する場合の義務に違反した場合には、それだけで第38条第1項の違反となる。また、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行してきた車両等が、横断歩道の直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにする義務に違反した場合も同様である。
道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月
単価高いっす。
自転車の青切符制度についてですが、仮にクルマと同じ青切符制度を導入した場合、反則金の支払いは任意です。
払わずに検察に出頭して争うことも可能。
現実的には自転車の赤切符の99%近くは不起訴なわけだし、自転車に青切符制度を作っても加点処分がない。
払わずにゴネる人が増えたら無意味なんです。
クルマの青切符については払わずに検察に出頭して争うこともできますが、たぶんかなりの割合は不起訴。
しかし加点処分は残るのでまだ意味はある。
それらを踏まえて警察庁有識者会議では「B案」なるものまで視野に入れている。
A案のデメリットとして「反則金を払わない人の増加」を懸念していると読み取れますし、払わずに逃げる人が増加すると青切符制度は崩壊します。
売上向上が目的なら、単価が低い自転車の違反をターゲットにしないんじゃないですかね。
「売上を得るための時間(違反処理するための時間)」が変わらないなら、単価が高いほうを選ぶのは当然。
そもそも
警察官のマンパワーなんて限られているし、売上向上が目的ならなおさら単価が高いほうを狙いますけどね。
10件検挙して5万円なのと、10件検挙して10万円ならどっちを選ぶのだろうか。
青切符制度が昭和42年に作られた理由は、急増するクルマと原付の違反について迅速な処理をしたかったから。
自転車に青切符制度を作る理由も、違反処理の迅速化と、事実上不起訴になる赤切符では違反に対する追及がイマイチだからですが、青切符制度を作っても払わずに争う人がいたら、やはり不起訴がメインになるでしょう。
青切符制度の導入は歓迎しますが、制度設計を間違うと警察や検察を著しく圧迫してメタメタになるような気もします。
起訴して裁判で争うのって、検察も大変なんだと思う。
令和になってからもクルマの信号無視について最高裁まで争う事例が出てますが、
青切符制度でも争って最高裁まで張り切る人が急増したら、裁判所と検察は発狂する。
自転車の青切符制度についても、ムダに争う人が増えたらどうなるのやら。
昭和30年頃には自転車の2人乗りや無灯火で高裁まで争っている判例もありますが、
高裁まで争う時点で人件費倒れ。
罰金取れても赤字です。
そもそも、警察のマンパワーが足りてないから検挙数が少ないだけなんじゃないかとすら思うのですが。
青切符制度があっても、取締りする警察官がいなければ無意味な気がします。
「売上補填説」についてですが、売上を向上したいなら単価が高いほうを狙うのは当然。
警察庁が「売上補填説」なんかを視野に入れているとは思えませんが、どちらにせよ制度設計がどうなるのかは興味深いところです。
なぜか制度設計について報じるメディアが無い気がしますが、世間的には「自転車に青切符、ばんざーい」くらいの関心度なんでしょうか。
私も「ばんざーい派」ではありますが、大きな期待をするのは違う気がします。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
私のうがった見方をお話しします(笑)。
辛坊治郎氏は、大阪の読売テレビのアナウンサー出身で、フリーになった後も、大阪での仕事が多かったため、大阪の自転車マナーの悪さをよくご存じなのでしょう。
実際、大阪で自転車の取り締まりをしたら、管理人様の言葉を借りれば、それこそ「入れ食い状態」で、休む間もなく、青切符を切れるので、効率も良いとと思います。
ご本人が憤慨しているのは、ご自身も、ひどい自転車の運転をされているからかと思われます。
コメントありがとうございます。
自転車の反則金ができても、単価はかなり低いことになるのであまり売上が上がらないと思うんですね。
しかも自転車の人は「最強の人」がまあまあいるので、ゴネる人が増えて違反処理に時間がかかりますし。