先日のこちらについてですが、
自転車が信号無視をしたときに必ず被害者になる…というわけでもなくて加害者として有罪(重過失致死傷)になることはあります。
ところで実態として赤信号無視がどれだけあるかについてはさほど調査があるわけでもないですが、「自転車の赤信号無視の実態分析に関する研究」(元田良孝ら)に赤信号無視した自転車の調査があります。
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自転車の赤信号無視の実態
調査結果はこちらになります。
観測地点は、盛岡市内の横断歩道を横断する自転車や歩行者の交通量は多いが交差道路の交通量が少なく、信号無視を誘発しやすいと考えられる横断距離の短い交差点3か所を選定した。観測は平成22年6月~12月の朝の通勤・通学時間帯である平日の 7:30~9:00の間に行い、延べ10日間観測を行った。天候はいずれも雨や雪の降らない日を選んだ。それぞれの交差点について表1に示す。調査では交通手段、信号無視の有無、周囲の歩行者や自転車の信号無視・遵守状況、性別、年齢層(高校生・高校生以外)を観測した。
http://p-www.iwate-pu.ac.jp/~motoda/dobokukeikakuharu11motoda.pdf
これによると自転車の信号無視が42.5%、歩行者の信号無視が19.9%となり、自転車の信号無視は著しく多いと言わざるを得ない。
もちろん、片側三車線の交通量が多い幹線道路で調査したらだいぶ下がるでしょうけど。
ちょっと面白いのは、前方にいる自転車や歩行者の挙動が影響を及ぼすか?という調査。
前方にいる自転車や歩行者が信号無視したときに、後続の自転車や歩行者が信号無視するかという話ですね。
以下3つのパターンに分類しています。
①遵守
被観測対象の自転車、歩行者の前方の交差点にいる自転車あるいは歩行者全員が信号を遵守している場合。
②無人
被観測対象の自転車、歩行者の前方の交差点に自転車も歩行者もいない場合。
③無視
被観測対象の自転車、歩行者の前方の交差点で自転車あるいは歩行者が1人でも信号無視をして交差点を通過し、その様子が被観測対象の自転車、歩行者から見える場合。
③のイメージ。
結果はこちら。
自転車の信号無視 | 歩行者の信号無視 | |
①遵守 | 19.7% | 14.6% |
②無人 | 54.0% | 26.2% |
③無視 | 78.9% | 73.7% |
さらに面白いのは「信号遵守ダミー自転車」を置いて信号遵守している状況を人為的に作った場合の信号無視率。
自転車 | 歩行者 | |
ダミーあり | 14.8% | 26.3% |
ダミーなし | 42.5% | 19.9% |
信号遵守ダミー自転車を置くと、自転車の信号遵守率は大幅に改善。
他の自転車がどう行動しているかが自転車の行動に影響している可能性が高い。
ただし歩行者については逆に増えてます。
なかなか興味深い結果ですが、要は「他人の行動」がそれなりに影響したとも言えるし、いわゆる「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という標語にしてもリアルに再現されています。
加害者にも被害者にも
先日のこちらになりますが、
過失割合云々もそうですが、自転車は重過失致傷罪で普通に有罪になる案件。
基本過失割合はこちら。
赤信号無視自転車 | 青信号オートバイ |
80 | 20 |
ちなみに判例から見ると、具体的状況に左右されるため何とも言い難いのですが、比較的近いかなと思う事例だと自転車過失を85%にしてました。
自転車が赤信号無視した判例を適当にピックアップしました。
自転車 | クルマ | 備考 | |
大阪地裁 H5.1.28 | 85 | 15 | 下記① |
大分地裁 H7.8.24 | 60 | 40 | 下記② |
名古屋地裁 H9.6.27 | 80 | 20 | 下記③ |
仙台高裁H7.6.28 | 50 | 50 | 自転車は黄→赤進入、車は10キロ以上の速度超過 |
山形地裁H6.11.30 | 70 | 30 | 仙台高裁H7.6.28の一審 |
名古屋地裁H9.4.24 | 55 | 45 | 車は40キロの速度超過 |
東京地裁S44.7.16 | 50 | 50 | |
東京地裁H6.3.18 | 50 | 50 | 自転車は青に変わる前に横断開始。車は黄色信号で交差点に進入し加速。 |
大阪地裁H8.7.16 | 80 | 20 | 車は15キロの速度超過 |
秋田地裁大曲支部S51.5.18 | 100 | 0 | 自転車は赤点滅、車は黄色点滅(下記④) |
名古屋地裁H24.1.11 | 75 | 25 | 車が前方注視していれば40m手前で自転車を発見可能 |
東京地裁H24.1.18 | 50 | 50
(原付) |
自転車は車用信号機の右折矢印に従い小回り右折(自転車用信号機は赤) |
※「下記」と書いてある判例の具体的内容はこちら。
要はどの時点で自転車が信号無視して突破したかを確認可能か?という点や、速度遵守していた場合にその時点で回避可能性があるか?に左右されます。
当たり前ですが、刑事責任が無罪になることと、民事の過失は関係ありません。
加害者にも被害者にもなりうるのに信号無視する人の心理はよくわかりませんが、加害者になりたくもなければ被害者にもなりたくはない、というシンプルな発想があれば通常は信号を遵守するような気がします。
わざと事故を起こしてやろうと思って信号無視する人は少なく、あくまでも「横着して行けると思って信号無視したらダメだったパターン」なんだと思われますが、「行けるかどうかを判断」するよりも、赤と青でシンプルに制御されたものに従うほうがラクですしね。
なお、以前のこれも「余裕で」信号無視になります。
一部の自称道路交通法に詳しい方々が「信号無視にならない」と発狂してましたが…単なる勉強不足でしたし。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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