ちょっと前に書いた件ですが、オランダさんは自転車の交通違反に対して取締りを強化するらしい。
ここで取り上げたのは「取り締まり権限の拡大」。
つまりは警察官以外でも取り締まりを可能にするっぽい話ですが、オランダってそもそも、日本よりはるかに取り締まりが厳しいという意見もあれば、あまり取り締まりしてないみたいな話も出たりする。
結局のところ、「取り締まり件数」で見ないとわからない。
というのも数年前にオランダさんは「ながらスマホ自転車」への罰則を強化したはすで、それなりに社会問題化しているみたいな記事を見まして。
現実はどんな感じなのか調べてみたのですが、こういう記事が見つかります。
携帯電話を持ちながら自転車に乗ると約53,000の罰金。16パーセント増加
オランダ当局は昨年、自転車運転中に携帯電話を使用したとして自転車利用者に5万3259件の罰金を課した。これは16.3%という「驚くべき」増加であると法務安全省が木曜日に発表した。自転車に乗りながらテキストメッセージを送信すると、140ユーロの罰金が科せられます。
About 53,000 fines for biking while holding a phone; up 16 percentAuthorities in the Netherlands issued cyclists 53,259 fines last year for using their phones while cycling. That is a “r...
これが多いのか少ないのかは判断しにくいですが、データは2022年らしい。
無法者大国ニッポンの自転車取り締まり件数を見てみると、令和4年(2022年)の自転車の交通違反の検挙件数(赤切符)が24549件、指導警告が131万8830件。
指導警告は実質的に単なる注意止まりで罰則があるわけではないのと、オランダさんのデータは「ながらスマホのみ」なので比較しにくいですが、
ジャパンの自転車赤切符 | オランダさんの「ながらスマホ」による罰金 |
24549件 | 53259件 |
日本の自転車赤切符については、不起訴率が98~99%と警察庁が報告しているので、起訴されたのが多めに2%とみると、罰金に至ったケースは推定ですが490.98件か。
オランダさんの人口(約1759万人)と日本の人口(1億2494万7千人)、オランダと日本の自転車利用率や分担率を考慮しても罰金に至ったケースはオランダさんのほうがはるかに多いかと。
まあ、日本の起訴率を無視して「赤切符」という枠でみても、オランダさんのほうがはるかに多いような予感すらしますが、日本ってフル電動自転車(一般原付)を無免許・ナンバー無し・ノーヘルで乗り回しても
「注意指導警告」
という寛容な国だから、自転車の交通違反なんてほとんどが注意指導で終わることになる(131万8830件)。
執務資料や日弁連の「赤い本」とは解釈が違うことに注意。
で、青切符制度導入の話。
なんか一部では「違反=青切符」みたいな誤報が流れているみたいですが、警察庁も国家公安委員会も否定。
実効性のある指導警告
運転に免許を必要としない自転車利用者に対して交通ルールを認識させる機会でもあることから、違反者自らの違反行為の危険性や交通ルールを遵守することの重要性について理解できるよう実効性のある指導警告を行う。
取り締まりの推進
警察官の警告に従わずに違反行為を継続したときや、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせたときなどには、積極的に取締りを行う。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf
国家公安委員会委員長記者会見要旨
令和5年12月26日(火)11:02~11:09
問 自転車運転の青切符を盛り込んだ報告書が国家公安委員にも報告されたと思います。そこでお伺いしたいのは今後の教育の問題です。特定小型原付でも具体的な教育があまりなされている様子がなくて、今後、警察庁だけではなくて文科省とか総務省とも連携しなければならないと思います。閣僚としてどのように働きかけるおつもりかお願いします。
答 まずご指摘の自転車につきましては、近年、対歩行者との事故が増加傾向にあるとこういうふうにまず認識をしております。そのことを踏まえまして、警察庁においては、本年の8月以降、有識者検討会を開催してきたところでございます。お尋ねのとおり、このたび、有識者検討会においては、安全教育、違反の処理、交通規制の3点に関して、今後の取組の方向性について提言をする中間報告書が取りまとめられ、提言いただいたところでございます。
このうち、交通安全教育につきましては、官民の知見により、それぞれの年齢層、ライフステージに応じた安全教育に係るガイドラインの策定をいたしまして、安全教育の質の担保をすることが提案されているところでございます。これを実現するためには、教育現場や自治体との連携が非常に重要であるため、関係省庁に対して必要な働き掛けを行っていくよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
そのようにしっかりと連携をいたしまして、やってまいりたいと思っておりますが、違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用に当たっては、指導警告をまず原則といたします。これに従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては青切符による取締りを行うことにより、目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取組をしっかりとやってまいりたいと考えております。問 取締りについては、まず切符を切るということではないということですね。
答 申し上げたとおり、まずはやはり指導警告これを原則といたしておりますので、報道等では即青切符というイメージが残っておりますが、やはり交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが私どもの目的でございますから、その点については、申し上げたとおりでございます。
国家公安委員会委員長記者会見要旨
今までも悪質な違反、警察の指示に従わない違反、具体的危険を生じさせた違反くらいにしか赤切符を切ってないですが、青切符制度導入により、今まで赤切符だったものが青切符になる程度の話でしかない。
徳島県は9年ぶりに自転車の違反に赤切符を切ったなんて珍報道も出てましたが、
某県警傘下の警察官が2年くらい前に「本部からの指令により、自転車の違反については切符を切れない」と言っていたので、正直そんなもんかと。
なおこの発言に信憑性がある理由としては、「あいつに切符を切ってくれ!」みたいなシチュエーションで言い訳的に語ったわけではなく、単なる雑談の中で出てきた話だから。
オランダさんは自転車の「ながらスマホ」に対してカジュアルに罰金を課す運用をしているような雰囲気すら感じますが、たまに聞く「オランダはほとんど取り締まりをしていない」みたいな話。
例えばオランダさんの2022年における交通違反の件数は815万3043件だそうな。
行政交通取締法(Wahv)に基づく2022年の交通違反件数は8,153,043件でした。これは、8,024,118 件の交通罰金が課された 1 年以上前の数字です。1.6%の増加です。罰金は、スピード違反、赤信号無視の運転、携帯電話での通話などに対して課せられている。これら 3 つの違反に加えて、間違った駐車/停止のカテゴリーに対して課せられる罰金も大幅に増加しました。これは前年より約6万人増加している。考えられる説明としては、コロナ危機の後、商店が再び営業したため、市内中心部でより多くの駐車場が再開されたということかもしれない。サイクリング中の電話使用の数字も顕著に増加しており、前年の 45,778 件と比較して、2022 年には 53,259 件となっています。16.3%の増加です。
交通罰金のほとんどはスピード違反に対して課されます。課せられた罰金総額8,153,043件のうち、6,512,086件は制限速度違反によるものでした。前年と比べて12万9,850人の差だ。それから6,641,936人でした。
これらの交通違反の大部分は、ナンバープレートの取り締まりによって摘発されます。2022年にスピードカメラによる検査後に課せられたスピード違反の罰金は3,014,680件だったが、2021年には2,830,213件となった。これは約 6.5% の増加です。また、携帯レーダーセットで検知されたスピード違反は1,340,692件で、前年同期は1,509,650件でした。
Meer dan 8 miljoen verkeersovertredingen in 2022Er zijn 8.153.043 verkeersovertredingen geconstateerd in 2022 op grond van de Wet administratiefrechtelijke handhaving v...
日本でいうオービス的な取り締まりがメインなんかな?
対する日本の2022年の交通違反件数は614万1535件とあります。
たまに聞く「オランダはほとんど取り締まりをしていない」みたいな話なんですが、たぶんこれって「何と比較しているのか」の話なんじゃないのかなと思うわけです。
比較する対象次第で「ほとんど」にもなるだけなんじゃないかと。
日本はクルマの違反にしてもたいした取り締まりをしていない気がしますが、「たいした」についてはあくまでも個人の感想です。
純粋に件数で比較してもしょうがないし、人口、利用率などを加味して比較してこそになりますが、日本って自転車の違反については事実上罰則がない。
赤切符でも98~99%が不起訴なので、赤切符になっても検察に出頭すると起訴猶予処分で終わる。
不起訴になった98~99%に対する罰則的意味合いとして青切符なんだろうなと思いますが、個人的にはカネを払うことのみが罰則とは思ってなくて、わざわざ平日に休みを取って検察に出頭するというプロセス自体が罰則的な意味合いを持つんじゃないかと思ってました。
タイムイズマネーですから。
その意味では青切符制度になり「カネ払えば解決」とも言えるのですが、青切符制度って「払わずゴネる奴」が大量発生すると崩壊します。
払わず争うなら結局は検察送致になるわけで、赤切符と変わらない。
理屈の上では信号無視について最高裁まで争うこともできるし、現に令和になってから道路交通法違反(信号無視)について最高裁まで争った判例もありますが、
日本って他国からみたらユルユルなのかもしれませんね。
なお上の最高裁判例については、「信号無視したか?」が争点ではありません。
ある意味では興味深い判例ですが、これの二審の裁判長ってこの方です。
最高裁に破棄されて有罪になりましたが、仮に二審判決で確定していたら日本の取り締まりが大きく変わった可能性もあったわけでして。
だいぶ話が逸れましたが、オランダさんは自転車の「ながらスマホ」をガンガン取り締まりしている模様だし、今度からは取り締まりの権限を拡大するらしい。
信号無視などの取り締まり件数はわかりませんが、数字で見る分には日本の方がはるかにユルユルなのかもしれません。
まあ、日本のように設計がおかしい「歩道接続方式」の自転車道や、狭すぎて話にならない自転車道みたいな話はオランダさんではあまり聞かないので、インフラ面ではオランダさんが圧勝することは間違いないです。
ジャパンの自転車道というと、狭すぎて話にならないタイプとか、
通行義務があるのかないのかすらわからず、しかも歩道の中にあるため気がつかずにスルーしかねないタイプとか、
疑似自転車道(実態は単なる歩道に過ぎず、自転車に何ら優先権がないタイプ)とか、
支離滅裂な状況が続いていて、一部の道路交通法マニア以外を置き去りにしている気がしますが、「歩道」を「自転車道」と勘違いすればトラブルになることは必然。
大変ですよね、ジャパンは。
オランダでこんな使いにくい自転車道が出来たら発狂するんじゃないかと。
ちなみに日本では罰金(刑事罰、前科)と反則金(行政罰)は違いますが、オランダでいうところの罰金って行政罰に近いイメージなんかな?
よくわからない。
せっかく青切符を導入するなら遠慮せずにガシガシやって頂いても何ら問題ないですが、警察庁としてはそうではなさそうです。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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