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自転車の「車列間」飛び出し事故は、回避可能なのか?

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ずいぶん昔の事故を今さら掘り返すのも不思議ですが、

この事故については、ちょっと思うところがありまして。

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事故の態様

この事故は以前取り上げてますが、態様はこう。

6日午前、東京・国分寺市で自転車の女性が乗用車と接触して転倒し、おんぶしていた生後7か月の赤ちゃんが頭を強く打って死亡しました。

6日午前10時ごろ、東京・国分寺市東戸倉の都道で、近くに住むAさん(33)が自転車に乗って道路を横断していたところ、左から来た乗用車と接触して転倒しました。

警視庁によりますと、Aさんは息子で生後7か月のBちゃんをおんぶしていて、Bちゃんは転倒した際に頭を強く打って病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されました。Aさんも軽いけがをしました。

現場は横断歩道のない片側一車線の直線道路で、これまでの調べによりますと、自転車は信号待ちをしていた車の間をすり抜けて横断しようとしていて、センターラインを超えたところで乗用車と接触したということです。

NHK NEWS WEB

イメージはこう。

自転車が進行してきた道路はこちら(と思われる)。

事故現場。

報道では「横断」となってますが、

要はこれ、自転車による優先道路の進行妨害(36条2項)なんですね。
仮に横断と捉えたとしても「正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止」(25条の2第1項)なので、内容的には大差ない。

 

で、優先道路を通行していたクルマの立場からすると、幹線道路に近い道路であり、優先道路なので「左右の見通しがきかない交差点の徐行義務」(42条1号)もない。
なのでクルマのドライバーが刑事責任を問われるかどうかは、

自転車を視認できる位置において、制限速度を遵守していれば急ブレーキで回避可能だったか?が問題になる(ただし「特別な事情」がある場合は別)。
既に回避不可能な距離感であれば、通常は不起訴(刑事責任を負わせるだけの過失がない)。

 

現行犯逮捕については、逮捕は刑罰ではなく捜査のための身柄拘束に過ぎないわけで仕方ない。
過失運転致死の「嫌疑」はありますから…それを捜査により細かく検証するために必要があれば逮捕する。
まあ、逮捕を刑罰や懲罰と勘違いする人が多いからややこしいけど…

 

要はこれ、見たところ横断禁止や右折禁止の規制は見あたりませんが

優先道路の進行妨害禁止(36条2項)なので、車列間を横切り優先道路に進入するなら、ここで一時停止して確認する注意義務があるし、それが困難であれば近くに信号付き横断歩道があるのだから、ほんのわずか迂回して青信号で横断すれば済む。
当然注意義務としてはそうなりますよね。

で。
この事故についてどのように処理されたかはわかりませんが、自転車を運転していた人は被害者ではなく加害者になるのよね。
同乗していた子供を死亡させたことになるのだから、重過失致死罪に問われる可能性もある。

民事の場合

民事の場合、優先道路通行車と非優先道路通行自転車の事故は、基本過失割合が50:50。
民事は「どっちが悪いか?」ではなく、被害者が負った損害への賠償責任の問題なので優者危険負担の原則が働く。

 

これは自転車対歩行者の事故でも同じで、以前このような報道がありましたよね。

自転車で走行中、「犬のリード」は視認可能か?
先日書いたこちら。散歩中の犬のリード(引き綱)に絡まって転倒した自転車に腕を引っ張られてけがをしたとして、飼い主の女性が、自転車を運転していた男性に約6900万円の損害賠償を求めていた訴訟は1日までに、大阪高裁で和解が成立した。一審の神戸地...

自転車過失80%と報道されたため、どこぞのチャリカスが前を見ないまま暴走したのか?などと語る人がわりといたけど、裁判で認定された内容をみる限り、だいぶイメージは違う。
しかしこのような事実認定の下でも自転車過失が80%になるのは、優者危険負担の原則により「平等に過失相殺」ではなく「公平に過失相殺」するからなのよ。

 

民事を「どっちが悪いか?」の問題と捉えていると、理解しきれないと思う。

 

なお冒頭の件に似た民事判例ですが、

自転車による優先道路の進行妨害。
まあ、自転車が優先道路の進行妨害をした案件かと。自転車による優先道路の進行妨害(交差点における他の車両等との関係等)第三十六条2 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路...

6歳が運転する自転車(非優先道路):バス(優先道路)=50:50(東京高裁 平成26年12月24日)。
当然バス会社は無過失を主張してますが、自賠法3条は「運転者が無過失を立証しない限りは」賠償責任があるとして立証責任を逆転させているわけで、民事無過失はよほどのことがない限り難しい。
なぜ立証責任を逆転させているかというと、被害者保護なのよ。

 

フランスなんかは対歩行者、対自転車の事故については「歩行者や自転車に許しがたい過失がない限りは過失相殺できない」ことになっていて、「許しがたい過失」には信号無視を含まないと裁判所が判断しているくらいですが、刑事責任と民事責任は根本的に違うことを理解する必要があると思う。

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