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民事過失修正「明らかな先入」とは。

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最近おかしな解説ばかり繰り返す人がいてビックリしますが、優先道路対非優先道路のクルマ同士の事故について、基本過失割合は優先道路通行車が10%、非優先道路通行車が90%になる。

ところでこの類型においては、「非優先道路通行車の明らかな先入」の場合には優先道路通行車に+10%します。
問題になるのは「明らかな先入」という概念でして。

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民事過失修正「明らかな先入」

では民事過失修正要素の「明らかな先入」とはなにか?

優先道路通行車の通常の速度(制限速度内)を基準として、優先車が、非優先道路通行車の交差点進入時に、直ちに制動又は方向転換の措置をとれば容易に衝突を回避することができる関係にある場合

つまりはこういう話。

非優先道路通行車が交差点に進入した時点でそれなりに距離があり、優先道路通行車が制限速度内であれば「容易に」衝突を回避可能な関係にあることを民事では「明らかな先入」と呼ぶ。
あくまでも「容易に」なので、急ブレーキでギリギリ回避できたようなケースは当てはまらない。

 

現実的に「明らかな先入」が適用されることはマレです。
というのも、理屈の上では優先道路通行車が著しい速度超過をしていたなら、同修正要素が適用される余地がありますよね。
ところが著しい速度超過の場合にはそもそも基本過失割合を適用しない傾向にある。

優先道路通行車が114キロで直進。非優先道路通行車と衝突した場合の過失割合。
優先道路通行車と非優先道路通行車が衝突した場合、基本過失割合はこうなる。優先道路通行車非優先道路通行車1090ところで、優先道路通行車が著しい高速度で直進してきた場合、どうなるのでしょうか?優先道路通行車が著しい高速度で直進判例は名古屋地裁...

例えば名古屋地裁 令和4年9月28日判決は、優先道路通行車が著しい速度超過で交差点に進入した。

法定速度から54キロ超過の時速114キロですが、こういう事案は基本過失割合から修正するという概念ではない。

民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準として公にされている基本過失割合は、各事故において典型的な事案を想定したものであって、特異な事情がある個別の事案についても常に当てはまるというものではない。本件事故についてみると、被告車が法定最高速度を時速54キロメートルも上回る時速約114キロメートルという異常な高速度で走行していたという特異性があり、劣後道路からの左折進行車の運転者においてこのような高速度で直進車が走行していることを認識するのは容易なことではないし、他方、このような高速度で走行する車両の運転者は、周囲の交通の状況に応じた変化に対応し事故を回避することを自ら極めて困難にしているものといえる。そうすると、本件事故は、基本過失割合が当てはまる典型的な事案とはおおよそ言い難く

名古屋地裁 令和4年9月28日

その結果、裁判所が認定した過失割合はこう。

原告(非優先道路) 被告(優先道路)
5 95

著しい速度超過の優先道路通行車が95%だとする。
これはこの事案のみではなく、非優先側がきちんと確認して進行したのに優先側が著しい速度超過で突っ込んできた事例で「優先側100%」を認定した判例はいくつもある。

文字面だけみて「定義」を確認しないのは愚

他にも「夜間修正」と言って、歩行者や自転車に過失を加重する修正要素がありますが、この修正要素は「夜間だから」適用するものではない。

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「既右折」とは「既に右折している車両」のことを指す。
旧37条2項の「既に右折している車両」の解釈はこれ。

道路交通法37条2項にいう「既に右折している車両等」とは、右折を開始しているとかあるいは右折中であるというだけでは足りず、右折を完了している状態またはそれに近い状態にある車両等をいうとする解釈のもとに、本件において、被告人の車両が、いまだこの状態にはなく、直進する被害車両に優先権があるとした原判断は、正当である。

最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月28日

したがって、右折車と「右方から進入する直進車」の関係においては、既右折があり得ないことになる。

右折車が「既に右折している」ことがあり得ないのだから当然ですよね。
「既に右折を開始した」ではなく、「既に右折している」なわけ。

 

民事でいう「徐行なし」にしても、

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道路交通法でいう徐行の話ではない。

しかしあそこの人はガセネタばかり流して何をしたいのだろう。
「明らかな先入」については事故車両の衝突部位をみて判断するものではないのに、解説書も読まずにテキトーなことばかり流しているのよね…

 

民事の過失修正要素の中には、文字面みても意味を取り違えるものは多い。
だから素人さんが調べもせずに語ることは、ゴシップと変わらない。

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