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一時停止義務(43条後段)における「36条2項のほか」とは。

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読者様から質問を頂きました。

優先道路 対 非優先道路事故の過失割合と過失修正。
運転レベル向上委員会が、専門書とは異なる独自の過失相殺論を展開してますが、優先道路 対 非優先道路(一時停止規制あり)の考え方や法律の解釈、過失修正の適用が専門書とは異なる独自見解になっている。おかしな解釈を鵜呑みにすると、事故に巻き込まれ...
読者様
読者様
記事にある43条後段「36条2項のほか」というのは、「36条2項の場合を除き」という意味なのでしょうか?

まず確認から。
昭和35年時点では43条後段(交差道路の進行妨害禁止)がない。

○昭和35年

(指定場所における一時停止)
第四十三条 交差点に入ろうとする車両等は、公安委員会が道路又は交通の状況により特に必要があると認めて指定した場所においては、一時停止しなければならない。ただし、当該交差点において交通整理が行なわれているときは、この限りでない。

昭和46年改正で今のように改めました。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない

なぜ「第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか」としているかは昭和46年改正時に警察庁が解説している。

「第36条第2項の規定に該当する場合のほか」というのは、交差道路が優先道路または幅員が明らかに広い道路である場合には、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない義務は、この規定によって課されるのではなく、第36条第2項の規定によって課されるものであるという趣旨である。したがって、この場合の違反については、第36条第2項の違反のみが成立する。

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、1971年8月、東京法令出版

要は進行妨害があったときに何条を適用すべきかわからないと困るので、このように規定したんですね。

このような道路において、一時停止規制側は43条後段(交差道路の進行妨害禁止)だろうと36条2項(優先道路の進行妨害禁止)だろうと、進行妨害してはならないのだから運転者目線でそこを分ける必要はない。
しかし民事の解釈上は条文を根拠に、非優先道路に一時停止規制があるかないか、一時停止規制に従ったかどうかを過失修正要素にせず一律で基本過失割合に内包させて評価している。

 

ご指摘の通り、意味合いとしては「36条2項の場合を除き」と同じですね。

 

似たような規定に44条がありますが、「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか」として法令の規定、警察官の指示、危険防止のためやむを得ない場合には駐停車禁止場所の適用から除外している。

 

実際に運転する上では、進行妨害禁止義務が43条後段なのか36条2項なのかなんて関係ないですが、民事過失修正を考える上ではこれの解釈を知らないとわからない。

 

ところで、優先道路 対 非優先道路の事故について「著しい過失」や「重過失」として過失修正する項目がある。
運転レベル向上委員会は「著しい過失」や「重過失」となるものが何なのかを読んでないようですが、これらが何を指すかはちゃんと書いてある。

 

著しい過失の例としてはこれ。
・脇見運転等による著しい前方不注視
・著しいハンドル・ブレーキ操作不適切
・携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること
・おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反
・酒気帯び運転

 

重過失の例はこれ。
・酒酔い運転
・居眠り運転
・無免許運転
・おおむね時速30㎞以上の速度違反
・過労、病気及び薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある場合

 

これら以外でも著しい過失や重過失となる場合はありますが、一時不停止等の具体的なものは具体的に過失修正要素として記すのがお決まりパターン。
記されてないということは、修正要素としてないのでして。

https://youtu.be/ZrN5BgtX4dk?si=rPxsU4M9w0u9jRUV

「完全停止+二段階停止」を著しい過失として修正するなんていうものはなく、運転レベル向上委員会の独自論だし、「明らかな先入」については解釈が違う。
「直近直後進入」とか「一停無視が強い」という意味は全くわからない。

 

ところで、優先道路 対 非優先道路態様で優先道路側に基本過失割合10%を設定している理由は、この態様の事故は優先道路側にも前方不注視等の過失が認められることが多いから、優先道路側にも過失があるパターンを典型例として基本過失割合としている。
優先道路側に過失が認められない事故、例えば非優先道路側が直近進入してきて優先道路側に回避可能性がない場合には基本過失割合が適用されない非典型例になる。

 

こういう話は判例タイムズ等をきちんと読めば書いてあるのでして、「事故ったら36条4項の過失が必ずつく」なんてこともない。
現に優先道路態様の判例には優先道路無過失を認定した判例がいくつもある。

 

民事過失割合を考えるときに、まず「基本過失割合が適用になる事故か?」が問われる。
理屈の上では優先道路側が100%になる非典型例もあるし、現にそれに近い判断をされた事案もある。

優先道路通行車が114キロで直進。非優先道路通行車と衝突した場合の過失割合。
優先道路通行車と非優先道路通行車が衝突した場合、基本過失割合はこうなる。優先道路通行車非優先道路通行車1090ところで、優先道路通行車が著しい高速度で直進してきた場合、どうなるのでしょうか?優先道路通行車が著しい高速度で直進判例は名古屋地裁...

基本過失割合から足し算引き算をして決めるわけではない。

民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準として公にされている基本過失割合は、各事故において典型的な事案を想定したものであって、特異な事情がある個別の事案についても常に当てはまるというものではない。本件事故についてみると、被告車が法定最高速度を時速54キロメートルも上回る時速約114キロメートルという異常な高速度で走行していたという特異性があり、劣後道路からの左折進行車の運転者においてこのような高速度で直進車が走行していることを認識するのは容易なことではないし、他方、このような高速度で走行する車両の運転者は、周囲の交通の状況に応じた変化に対応し事故を回避することを自ら極めて困難にしているものといえる。そうすると、本件事故は、基本過失割合が当てはまる典型的な事案とはおおよそ言い難く

名古屋地裁 令和4年9月28日

この事故の概要はこう。

青車両(原告)は一時停止後、優先道路に向かい左折。
赤車両(被告)は優先道路(法定速度60キロ)を時速114キロで直進し衝突。

 

青車両の後部座席に座っていた同乗者が車外に投げ出され死亡した事故です。
なお青車両が第二車線に左折したのは、直後の交差点で右折するため。

 

問題になるのは過失割合ですが、原告と被告の主張は解釈が対立している。

◯原告の主張
優先道路に左折するにあたり十分確認してから左折したところに異常な高速度で追突されたような形だから、原告は無過失である。
◯被告の主張
優先道路と非優先道路の基本過失割合10:90をベースに、時速20キロ以上の速度超過修正「+20%」を適用すれば30:70なのだから、原告の過失は70%である。

「オレ無過失!」と「オマエ70%」で示談がまとまるわけもなく裁判に至ってますが、被告(優先道路通行車)を被告人とした刑事裁判では、原告(非優先道路通行車)に落ち度はないとなっている。
さて名古屋地裁が判断した過失割合がどうなのか。

原告(非優先道路) 被告(優先道路)
5 95

基本過失割合から足し算引き算をしても優先道路95%にはならないし、判決文においても「基本過失割合が適用される事案ではない」とする。

 

ところで、ちょっと前にこのように書きましたが

過失相殺は理不尽なのか?
自転車や歩行者が赤信号無視してクルマと衝突した場合の過失割合についてご意見を頂きました。確かにクルマ対クルマの赤信号無視事案は、赤信号無視した四輪車に100%の基本過失割合が設定されているのに対し、対歩行者や対自転車では青信号のクルマにも基...

「優先道路側にも必ず10%つく」という誤った考えに立てば理不尽に思えるし、「基本過失割合は優先道路にも軽度の過失が認められるケースが多いから、軽度の過失がある前提を典型例にしただけで、過失がない場合は適用されない」という正しい情報にアップデートされると何ら理不尽な世界ではないことがわかる。
ドラレコが普及するにつれ、無過失の立証に成功するケースは増えるでしょうけど、

 

民事過失相殺は理不尽なのではなくて、誤った考えを信じるから理不尽に思えるだけなのよ。
インターネット上にはこういう誤った解釈が横行しがちなんだけど、法律って無理難題を押し付けるものではないのよね。

 

先日見かけてドン引きしたのがこちら。

自身に過失がなければ刑事罰は来ません。
ただし、そもそも「過失」とは何なのかを理解してない人が多い気がする。

 

例えば苫小牧時速118キロ白バイ事故について、「白バイのほうが悪いんだから有罪はおかしい」という意見が横行したけど、刑法上の過失は相手と比較考量して「どっちのほうが悪いか?」を決めるのではなく、被告人に不注意があったかどうかのみが問われる。
苫小牧白バイ事故については、右折車が右折を企図したときには既に白バイが接近していたから安全不確認の過失が認められたのでして。

「苫小牧白バイ118キロ事故」について、札幌高裁が原判決を支持した理由。
いろいろ話題になった「時速118キロ白バイ」と「内小回り右折車」の事故。過失運転致死罪に問われた右折車ドライバーに対し、一審(札幌地裁  令和6年8月29日)は有罪判決、二審は原判決を支持し控訴棄却。そもそもこの判決の意味するところを報道が...

これがもし「右折開始時に十分な距離が確認できたから右折したのに、想定外の高速度で白バイが突っ込んできた」なら無罪になる。
それは右折方法違反があったとしても。

 

この事故の概要はこう。

被告人が対向車を確認したのは、衝突地点の95.4m手前。
被告人車の速度から計算すると、右折開始の6秒前

 

そして被告人は交差点中央より25m手前から「逆走小回り右折」を開始してますが、被告人車は大型車なので右折完了に時間がかかる。

被告人が右折を開始した地点では既に両者の距離は79mまで接近していた。

 

もしこれが150mとか離れていたなら話は別なのよ。
結局、事故を起こしたという結果を過失にするのではなく、十分な安全確認をしたかしてないかが問題なわけですが、苫小牧白バイ事故については右折開始時の両者の距離を報道しないから謎の陰謀論が渦巻く。
きちんと理解すればこの判決は妥当と言えますが、世間は「被害者が118キロ」に固執して大事なことを見逃すから理不尽と感じてしまう。

 

こういう部分の「誤り」をきちんと解説する人がいないと、いつまで経っても陰謀論ばかりなのよ。
民事の過失相殺論にしても、きちんと理解すれば理不尽ではないし、きちんと理解しなければ理不尽に感じるのは当たり前。
なぜきちんと解説せず誤った独自見解ばかり発表する人がいるのか理解し難いけど、こういう結果が陰謀論の元なのよね。

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